不倫慰謝料請求で低額になるケース

文責:弁護士 石井浩一

最終更新日:2025年08月05日

1 不倫慰謝料が低くなってしまうケースについて

 不倫慰謝料は精神的損害に対する損害賠償金ですので、市販されている物を壊された時のような明確な算定基準はありません。

 しかし、実務においては裁判例の積み重ね等に基づく相場が存在し、不倫慰謝料の金額は、事案によっても異なりますが、数十万円~300万円程度とされています。

 金額に大きな幅が存在するのは、慰謝料の金額を増減させる要素が複数存在し、事案によってそれらの要素が含まれる場合とそうでない場合とがあるためです。

 不倫慰謝料を引き下げてしまう要素も存在します。

 代表的なものとしては、不貞行為の回数が少ないことや、不貞行為の時点における婚姻期間が短いこと、不貞行為の時点において夫婦関係が悪化していたことが挙げられます。

以下、それぞれについて詳しく説明します。

2 不貞行為の回数が少ないこと

 不倫慰謝料は、不貞行為によって、不倫をされた側が有する平穏な夫婦生活を送る権利が侵害されたことによって発生します。

 一般論として、権利侵害行為である不貞行為の回数が多ければ、不倫をされた側の損害は大きくなり、少なければ損害は小さくなると考えることができます。

 不貞行為の回数が少ない場合には、不貞慰謝料も低額になる可能性があります。

 不貞行為の回数が少ない場合、実務上別の問題も発生します。

 不倫慰謝料を請求するためには、不貞行為の証拠を取得する必要があります。

 不貞行為の回数が少ないと、証拠を押さえられないことや、不倫相手の身元を特定できないことがあり、結果として慰謝料の請求ができないということもあります。

3 不貞行為の時点における婚姻期間が短いこと

 2で説明しました通り、不倫慰謝料は、不倫をされた側の配偶者が有する平穏な夫婦生活を送る権利が侵害された際に発生するものです。

 ひとつの見方として、この権利の侵害の程度が小さい場合には、不倫慰謝料は減少するといえます。

 平穏な夫婦生活を送る権利は、長年の積み重ねによって形作られていくものであると考えられます。

 婚姻期間が短い場合は、平穏な夫婦生活を送る権利は小さく、不貞行為による権利侵害の度合いも小さいといえることから、不貞慰謝料の金額が下がる傾向にあります。

4 不貞行為の時点において夫婦関係が悪化していたこと

 たとえ不貞行為があったとしても、その時点で夫婦生活が悪化していた場合、平穏な夫婦生活を送る権利の侵害の程度も小さくなります。

 そのため、不倫慰謝料は減少する傾向にあります。

PageTop